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大切なことは時を経ても変わらない
著 者
吉沢久子
定 価
  本体1000円+税
発 行
  2019.5
ISBN
  978-4-7593-1640-7
大切なことは時を経ても変わらない
101歳の人生をつらぬく
「人ともの」に感謝する生活哲学

著者は年を重ねることをプラスにとらえ、物事を深く味わえる境地を喜びにしました。いつも心していたのは、身丈に合った暮らし方や、身のまわりの小さなしあわせを大切にすること、自分なりの工夫を楽しむこと、何でもよいほうに考えてストレスをためないことなど、前向きで喜び上手でいることです。その生き方は、高齢時代を自分らしく生き抜く良きお手本として、多くの読者から共感と信頼感を寄せられています。本書は、それらの著者のメッセージのエッセンスと人気のある料理エッセイを、小社既刊の3冊から抜粋して再編集し、読みやすい新書判にしたものです。


1章 小さなしあわせを集めながら
2章 「好き」を大事に心豊かに
3章 自分らしく小さな努力をして
4章 一人のくらしをたのしんで
5章 人とのつながりを大切に
6章 おいしいごはんをていねいに
7章 食いしん坊を生きる力に
8章 季節ごとのおたのしみ《春から夏》
9章 季節ごとのおたのしみ《秋から冬》
10章 むだなく賢く台所の知恵


 いやなこと、辛いことが全くない人なんていないでしょうが、それをいつまでもいやだ、辛い、と胸にくすぶらせているのが私は嫌いなのです。うらみとか憎しみをかかえて生きるのは、かなりエネルギーの要ることですから、そういう暗い圧力に耐えられない性分なのかもしれません。
 第一、せっかくおいしいものをたべても、暗い顔でたべてはおいしくないし、悩みは重荷だと考えて早く捨てたくなるのです。要は、私の場合あんまり長く悩みつづけたりできない性分なのでしょう。でも、そういう性分でよかったと自分では思います。

 面白いものですね。自分をいたわる気持になってから、ストレスが消えていたのです。若いときと同じに何でもできなければと、肩ひじ張っていたときは、よく頭痛があったのですが、それがケロッと消えてしまったのです。
 「もの忘れがはげしくなったら、頭痛まで忘れてしまったの」
 と、身辺の人に話しています。そして、
 「長寿国日本の平均寿命を生きたのだから、いつ死んでも当然」
 という気持になってきました。これ、決して強がりでも、投げやりでもなく、本当にそう思っているのです。年をとるって、自分をそういうふうに見られるようになるのですね。

 亡くなった夫が晩年よく口にしていた言葉を思い出します。
 「年をとったら、若ものにつきあってもらわないと、若い人の気持がわからない。しかし、若いものから見れば、特別の魅力がなければ好んで老人とつきあおうとは思わないだろう。できる範囲でスポンサーになって、若い人から教えてもらうという気持が大事なんだ」
 まあ、若い人を連れてお酒をのみ歩いていたので、私にはそういいきかせていたのかもしれませんが、たしかに、年とともに若い人から教えてもらうことは多くなりますね。

 一人のくらしをたのしめるか、たのしめないかは、要は考え方で、むかしの人はうまい言いまわしでそれを「ものは考えようだ」といっていますね。ほんとに、ちょっと視点を変えてみると、心にわだかまっていたことが「別にどうということもないじゃないか」と思えてくるようになります。
 家族をみんな見送ったときも、一人のくらしは自由だ、これは家族が私にくれたプレゼントだと思って、たのしもうと考えました。嘆いてもかなしんでも、家族が生き返るわけでもなく、かえって家族は心配するだろうと、まあ、勝手といわれればそうに違いありませんが、私はそう考えて生きることにしたのです。
 それから三十年以上、私は自分をかわいがって明るくたのしく生きてきましたので、病気はしないし元気です。心が痛むと、からだにもひびきますもの。いっしょうけんめい、前を向いて生きてきました。
 いつも、「ものは思いよう」だということを自分にいいきかせ、いつかそれが自分の性質のようになっていたことに今は気づいています。


著者は超高齢時代の先駆者として、常に前向きに好奇心をもって、新しい出会いや物事を面白がる気持ちを持ち続けました。また、長年にわたり家事評論家として活躍した経験もあり、暮らしに関して合理的な考えを持っていました。料理をすることも食べることも大好きで、生涯、食いしん坊を生きる力にしてきましたので、料理エッセイは世代を超え、女性だけでなく男性にも人気がありました。小社では、特に著者が90歳になった年から毎年1冊エッセイ集を刊行し続けてきましたが、90歳を超えてなお、新聞や雑誌の連載をこなし、生涯にわたって社会の動きに関心を持ってご自分の意見を発信し続けた姿勢は、見事として言いようがありません。最後まで信念をつらぬいて生きた著者のメッセージが、読者の方々のご参考になれば幸いです。


吉沢 久子(よしざわ ひさこ)

1918年、東京生まれ。文化学院文科卒。若い頃から料理や家庭生活の知恵、暮らしの文化に関して、執筆や講演、ラジオ・テレビ出演などを通じて幅広く活躍。近年は、自身の体験をもとに老いの生き方を現在進行形で発信し、世代を超えて多くの読者の共感と信頼を集めた。
2019年3月21日逝去。享年101歳。
著書に『100歳の100の知恵』(中央公論社)、『ほんとうの贅沢』(あさ出版)、『100歳まで生きる手抜き論』(幻冬舎新書)、『吉沢久子 27歳の空襲日記』(文春文庫)、『94歳。寄りかからず。前向きにおおらかに』『95歳。今日をたのしく。もっと前向きに』『96歳。今日を喜ぶ。一人をたのしむ』『97歳。いくつからでも人生は考え方で変わります』『98歳。心して「一人」を生きる』『99歳からあなたへ いつまでも変わらない大切なこと』『今日をいっしょうけんめいで生きる』『老い方上手の楽しい台所』『ふつうで素敵な暮らし方』『春夏秋冬 しあわせを呼ぶ生き方』(以上、海竜社)ほか多数がある。





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