新入社員の退職理由ランキングTOP10

厚生労働省の調査によると、新入社員の約3割が3年以内に退職する「3年3割」の傾向が続いています。2021年入社の社員を対象とした最新調査では、34.9%が3年以内に退職しており、過去15年で最も高い割合となっています。

新入社員の退職理由ランキングTOP10の全体像

新入社員が早期に退職する理由は様々ですが、いくつかの主要な原因があります。これらを理解することで、新入社員自身が職場選びの参考にしたり、企業側が離職防止策を講じたりする助けになります。

新入社員の退職理由ランキングTOP10の全体像

退職理由の傾向と背景

新入社員の退職理由には、時期によって特徴があります。入社直後の4月から6月にかけては「入社前のイメージと実際の勤務状況や職場環境とのギャップ」が約半数を占めています。これは企業側の説明不足だけでなく、就活生側の情報収集不足も原因となっています。

一方、入社から3ヶ月経過した7月以降になると、「いじめやパワハラなどの人間関係」に起因する退職が増加します。業務に慣れてきた時期においては、業務内容よりも人間関係やメンタル面での課題が浮き彫りになるようです。

Z世代特有の退職理由の特徴

1990年代半ば以降に生まれた「Z世代」は、デジタルネイティブで効率を重視する特徴を持ちます。彼らは経済低迷期や東日本大震災、コロナ禍を経験したことで、堅実志向が強いとされています。

Z世代の新入社員は、「自分の希望と業務内容のミスマッチ」「待遇や福利厚生への不満」「キャリア形成が望めない」といった理由で退職を決断するケースが多く見られます。彼らは自身の希望する職種でキャリアを積むことを重視する傾向があります。

ビジネスアドバイザー

入社3ヶ月目は要注意期間です。業務に慣れ始めた頃に人間関係の課題が表面化しやすく、特にフォロー体制を強化すべき時期と言えます。

人間関係が引き金となる退職理由の実態

新入社員の退職理由の第1位は「人間関係の悪さ」です。特に入社1年未満の離職では、人間関係が原因で辞める人が最も多いことが調査で明らかになっています。

上司・先輩との関係性の問題

上司や先輩との関係性は、新入社員の職場定着に大きな影響を与えます。「ミスして説教された後、『あいつの仕事ゴミカスレベルに出来ないな笑笑』と言われとても傷ついた」「仕事が分からず聞こうとしたら自分で考えろと言われ、今度は自分なりに考えていたら仕事が分からないなら聞けと言われた」といった体験は、新入社員の心に深い傷を残します。

また、上司が部下に対して暴言や必要以上の叱責を行う様子を見ることも、新入社員にとって大きなストレスとなります。こうした環境では「この環境で長くいると身体も心もボロボロになってしまう」と判断し、早期退職を選ぶケースが少なくありません。

同僚・チームとのコミュニケーション不全

同僚や先輩との関係がうまく構築できないことも、退職の大きな要因となります。新入社員は質問や相談がしづらい雰囲気を感じると、孤立感を深めていきます。

特に周りの先輩や上司が忙しそうにしていると、質問していいのか悩んで働きにくさを感じてしまうことがあります。また、セクハラや社内いじめといった明確なハラスメントがなくても、上司や同僚とそりが合わず、人間関係に馴染めなくて退職するケースもあります。

人間関係の問題 具体的な事例 影響
パワハラ・いじめ 暴言、過度な叱責、侮辱的な発言 精神的苦痛、自己肯定感の低下
コミュニケーション不全 質問しづらい環境、孤立感 業務習得の遅れ、不安感の増大
相談できる人の不在 悩みを打ち明けられる相手がいない 問題の深刻化、孤独感

新入社員の退職理由の第1位は「人間関係の悪さ」であり、特に入社1年未満の離職では最も多い要因となっています。パワハラやいじめだけでなく、質問や相談がしづらい環境も大きな問題です。

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労働条件に関わる退職理由TOP10の詳細分析

労働条件に関する不満は、新入社員の退職理由の中でも大きな割合を占めています。特に「労働時間・休日の問題」と「給与への不満」が上位にランクインしています。

労働条件に関わる退職理由TOP10の詳細分析

長時間労働と休日取得の実態

退職理由の第2位は「長時間労働・休日への不満」です。残業が多い、休日出勤が頻繁にある、有給休暇が取りづらいといった労働環境に関する不満が多く寄せられています。

特に問題となるのは、採用面接では「残業はあまりない」と説明されていたにもかかわらず、実際には長時間労働が常態化していたり、サービス残業が横行していたりするケースです。このような「言われていたことと現実のギャップ」は、新入社員の信頼を大きく損なう要因となります。

また、上司のマネジメント不足による業務量の増加も、早期退職を考える一因となっています。適切な業務配分がなされず、新入社員に過度な負担がかかるケースも少なくありません。

給与水準と福利厚生の不満

「給与が低い」「待遇や福利厚生への不満」も主要な退職理由です。特に業務量に対して報酬が見合っていないと感じるケースや、同業他社と比較して給与水準が低いと感じるケースが多く見られます。

さらに深刻なのは「残業代・給与の未払い」の問題です。業績不振により給与の未払いが発生したり、残業代だけでなく出張費も自腹だったりするケースもあります。こうしたコンプライアンス違反は、企業の将来性に対する不安を招き、早期離職につながります。

  • 残業時間の超過と長時間労働
  • 有給休暇取得の困難さ
  • 休日出勤の頻発
  • 給与水準の低さ
  • 残業代・諸手当の未払い
  • 福利厚生の不足
  • 業務量と給与のアンバランス
ビジネスアドバイザー

採用時の説明と実態のギャップは最も避けるべき問題です。正確な情報提供と透明性が、信頼関係構築の第一歩となります。

業務内容とキャリア形成に関わる退職理由

業務内容のミスマッチやキャリア形成への不安も、新入社員の主要な退職理由となっています。これらは単なる不満というよりも、将来に対する見通しに関わる重要な問題です。

業務内容のミスマッチと期待とのギャップ

「自身の希望と業務内容のミスマッチ」「仕事内容が自分に合っていない」は、退職理由の上位に位置しています。これには二つのパターンがあります。一つは、採用時に説明された業務内容と実際の業務が大きく異なるケース。もう一つは、実際に業務を経験してみて自分の適性や興味と合わないと感じるケースです。

特に問題となるのは、「求人内容と違う現実」のケースです。例えば、営業職として採用されたのに実際は事務作業が中心だったり、クリエイティブな仕事を期待していたのに単調な作業が多かったりすると、大きな失望感につながります。

成長機会とキャリアパスの不透明さ

「キャリア形成が望めない」「成長できない」という理由も、新入社員の退職理由として重要です。若い世代は特に自己成長やスキルアップの機会を重視する傾向があり、そうした機会が乏しいと感じると早期に転職を考えるようになります。

具体的には、教育・研修制度の不足、上司からの適切なフィードバックがない、スキルアップのための挑戦機会が与えられないといった状況が、「成長できない」と感じる要因となります。また、先輩社員の昇進の遅さを見て、自分の将来のキャリアパスに不安を感じるケースもあります。

退職理由ランキング 具体的な内容 対策のポイント
1位:人間関係の悪さ パワハラ、いじめ、コミュニケーション不全 相談しやすい環境づくり、ハラスメント対策
2位:長時間労働・休日の不満 過度な残業、休暇取得困難 適切な業務配分、休暇取得促進
3位:業務内容のミスマッチ 期待と現実のギャップ、適性の不一致 採用時の正確な情報提供、適性に合った配属
4位:求人内容と違う現実 説明と実態の乖離 透明性のある採用活動、リアルな職場体験
5位:給与水準への不満 低賃金、業界平均との乖離 適正な報酬設定、評価制度の透明化
6位:他の仕事への興味 新たなキャリアへの関心 社内異動制度、キャリア面談
7位:残業代・給与の未払い コンプライアンス違反 適正な労務管理、透明性の確保
8位:勤務地への不満 通勤の負担、転勤問題 リモートワーク導入、勤務地選択制
9位:体調不良・怪我 過労による健康問題 健康管理支援、適切な業務量
10位:成長機会の不足 スキルアップ機会の欠如 研修制度の充実、成長機会の提供

新入社員の退職理由TOP10を見ると、「人間関係」「労働条件」「業務内容のミスマッチ」「キャリア形成の不安」という4つの大きなカテゴリーに分類できます。これらの問題は相互に関連しており、複合的に作用して退職決断につながるケースが多いです。

新入社員の退職は、個人にとっても企業にとっても大きな損失となります。個人は新たなキャリアをゼロから始める必要があり、企業は採用・教育コストが無駄になるだけでなく、組織の活力低下にもつながります。

退職理由のランキングを理解することで、就職活動中の学生は企業選びの際に注意すべきポイントを把握でき、企業側は離職防止のための効果的な対策を講じることができます。特に入社3ヶ月目は要注意期間であり、業務に慣れ始めた頃に人間関係の課題が表面化しやすいため、この時期のフォロー体制強化が重要です。

最終的には、採用時の透明性確保、適切な労働環境の整備、成長機会の提供、そして何より風通しの良い職場づくりが、新入社員の定着率向上につながるでしょう。

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よくある質問

質問1:新入社員が退職を考え始める時期はいつ頃が多いですか?
回答 入社後3ヶ月目(7月頃)が最初の退職検討ピークとなることが多いです。この時期は業務に少し慣れてきた頃で、人間関係の課題が表面化しやすく、また入社前のイメージとのギャップを強く感じる時期でもあります。
ビジネスアドバイザー

入社3ヶ月目は「ハネムーン期間」が終わる時期。企業側は特に手厚いフォローが必要です!

質問2:新入社員が退職を考えているサインにはどのようなものがありますか?
回答 遅刻や欠勤の増加、積極性の低下、表情の暗さ、同僚との交流減少などが主なサインです。また、将来のキャリアや転職に関する質問が増えたり、有給休暇を突然取得するようになったりする場合も注意が必要です。
質問3:新入社員が退職を考えているとき、上司はどのように対応すべきですか?
回答 まずは1対1で話せる場を設け、本人の悩みや不満を否定せずに傾聴することが重要です。具体的な改善策を一緒に考え、必要に応じて業務内容の調整や研修機会の提供など、実行可能な対応を示すことが効果的です。
ビジネスアドバイザー

「辞めないで」と引き止めるだけでは逆効果。具体的な改善策と成長ビジョンを示すことが大切です!

質問4:新入社員が入社前に企業のブラック度をチェックする方法はありますか?
回答 企業の口コミサイトや転職サイトのレビュー、OB・OG訪問、インターンシップ参加が効果的です。また、面接時に「残業時間の実態」「有給取得率」「新入社員の定着率」などを具体的に質問することで、企業の本音を引き出せることもあります。
質問5:新入社員が退職を決意した場合、どのようなタイミングで伝えるべきですか?
回答 一般的には退職希望日の1ヶ月前までに直属の上司に伝えるのがマナーです。繁忙期や重要プロジェクトの直前は避け、引継ぎの時間を十分に確保できるタイミングを選ぶことが望ましいでしょう。
ビジネスアドバイザー

退職は人生の選択肢の一つ。後ろめたさを感じる必要はありませんが、円満退社を心がけることが将来の自分のためになります。