【ビジネスマナー】敬称の使い方&敬語一覧

ビジネスシーンでは、適切な敬称と敬語の使用が信頼関係構築の基盤となります。「様」「殿」「先生」などの敬称や、「お/ご」「いたす」「申す」などの敬語を正しく使いこなせるかどうかで、あなたのビジネスパーソンとしての評価が大きく変わることもあります。しかし、敬称や敬語の使い方に自信がない方も多いのではないでしょうか。この記事では、ビジネスマナーとしての敬称の使い方と敬語の基本を、初心者でも理解しやすく解説します。状況に応じた適切な敬称の選び方や、敬語の種類とその使い分けなど、実践的な知識を身につけましょう。

ビジネスマナーとしての敬称の使い方と基本原則

ビジネスシーンでは、相手に対する敬意を示すために適切な敬称を使用することが重要です。敬称の選び方や使い方には、いくつかの基本原則があります。

ビジネスマナーとしての敬称の使い方と基本原則

相手別の適切な敬称選びのポイント

ビジネスシーンでは、相手との関係性や状況に応じて敬称を使い分ける必要があります。以下に、主な敬称とその使用場面を紹介します。

敬称 使用場面 注意点
様(さま) ・取引先や顧客
・社外の人全般
・目上の人
ビジネスでは最も一般的で安全な敬称
殿(どの) ・社内文書
・公文書
・辞令
口頭では使わず、文書のみで使用
先生 ・医師、弁護士、会計士
・教授、講師
・政治家
専門職や特定の職業の人に対して使用
氏(し) ・報告書や議事録
・第三者への言及
・新聞記事的な文脈
直接の呼びかけには不適切
さん ・社内の同僚や先輩
・カジュアルな関係の取引先
公式な場面では「様」を使うべき場合も
君(くん) ・社内の後輩(主に男性)
・部下(主に男性)
女性に使うと失礼になる場合がある

ビジネスシーンでは、基本的に「様」を使用するのが最も安全です。特に取引先や顧客、社外の人に対しては「様」を使うのが一般的です。「殿」は主に社内文書や公文書で使われ、口頭で使うことはありません。

「先生」は医師や弁護士、会計士などの専門職や、教授、講師、政治家などに対して使います。「氏」は報告書や議事録などで第三者に言及する際に使用しますが、直接呼びかける場合には使いません。

ビジネスマナーとしての敬称の基本は「社外の人には『様』、社内の人には『さん』」と覚えておくと間違いありません。ただし、社内でも役職が高い人や目上の人には「様」を使うこともあります。

文書とメールにおける敬称の使い分け

文書やメールでは、状況や文書の種類によって敬称を使い分ける必要があります。以下に、主な文書やメールでの敬称の使い方を紹介します。

  • 社外向け文書・メール:「様」を基本とする
  • 社内文書:「殿」または「様」を使用
  • 複数人宛てのメール:「各位」を使用
  • 部署宛ての文書:「御中」を使用
  • 招待状や案内状:「様」を使用

社外向けの文書やメールでは、基本的に「様」を使用します。例えば、「株式会社○○ △△部 □□様」のように記載します。社内文書では、「殿」を使うことが多いですが、最近では「様」を使う企業も増えています。

複数の人に宛てたメールでは、「○○部各位」「関係者各位」のように「各位」を使うのが一般的です。部署宛ての文書では、「株式会社○○ △△部御中」のように「御中」を使います。

招待状や案内状では、「○○様ご一家」「○○様ご家族」のように「様」を使います。結婚式の招待状などでは、「○○様ご夫妻」という表現も使われます。

ビジネスアドバイザー

敬称の使い方で意外と間違いやすいのが「御中」と「様」の使い分けです。「御中」は組織や部署全体に対して使う敬称で、「○○会社営業部御中」のように使います。一方、個人宛ての場合は必ず「様」を使い、「○○会社営業部 山田様」とします。「山田御中」は誤りなので注意しましょう。また、メールの宛先に複数の部署や会社を入れる場合、「各位」を使うのがスマートです。「○○様、△△様、□□様」と長く並べるより、「関係者各位」とするほうが見た目もすっきりします。

敬語一覧とビジネスシーンでの正しい使い方

敬語は、「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」の3種類に分けられます。それぞれの特徴と使い方を理解し、適切に使い分けることが重要です。

尊敬語・謙譲語・丁寧語の基本と使い分け

敬語の3種類それぞれの特徴と基本的な使い方を解説します。

敬語の種類 役割 主な表現
尊敬語 相手の行為や状態を高める ・「〜される」「〜なさる」
・「おっしゃる」「いらっしゃる」
・「ご覧になる」「召し上がる」
謙譲語 自分の行為を低めて相対的に相手を高める ・「〜いたす」「〜申す」
・「伺う」「拝見する」
・「頂く」「参る」
丁寧語 全体的に丁寧な印象を与える ・「です」「ます」
・「〜でございます」
・「〜ございます」

尊敬語は、相手の行為や状態を高めて敬意を表す表現です。「行く→いらっしゃる」「見る→ご覧になる」のように、相手の動作を高める言葉を使います。

謙譲語は、自分の行為を低めることで相対的に相手を高める表現です。「行く→伺う」「見る→拝見する」のように、自分の動作を低める言葉を使います。

丁寧語は、「です」「ます」などの丁寧な言い回しで、全体的に丁寧な印象を与える表現です。ビジネスシーンでは、基本的に丁寧語を使い、それに尊敬語や謙譲語を組み合わせて使います。

敬語の基本は「相手の行為には尊敬語、自分の行為には謙譲語、全体的には丁寧語」と覚えておくと分かりやすいでしょう。これを意識して話すことで、適切な敬語が自然と身につきます。

よく使う動詞の敬語表現一覧

ビジネスシーンでよく使う動詞の敬語表現を一覧で紹介します。これらを覚えておくと、日常的なビジネスコミュニケーションがスムーズになります。

一般動詞 尊敬語 謙譲語
言う おっしゃる、おっしゃいます 申す、申します
聞く お聞きになる、お聞きになります 伺う、伺います
見る ご覧になる、ご覧になります 拝見する、拝見します
行く・来る いらっしゃる、いらっしゃいます 伺う、参る(行く)
伺う、参上する(来る)
食べる・飲む 召し上がる、召し上がります 頂く、頂きます
知る ご存知、ご存知です 存じる、存じております
する なさる、なさいます いたす、いたします
もらう お受け取りになる、お受け取りになります 頂く、頂きます
あげる くださる、くださいます 差し上げる、差し上げます

これらの敬語表現を適切に使い分けることで、相手に対する敬意を正しく伝えることができます。例えば、「社長がそう言った」は尊敬語を使って「社長がそうおっしゃいました」、「私が彼に聞く」は謙譲語を使って「私が彼に伺います」となります。

特に注意が必要なのは「いただく」の使い方です。「いただく」は謙譲語なので、「社長がお茶をいただく」は誤りで、「社長がお茶を召し上がる」が正しい表現です。

ビジネスアドバイザー

敬語で最も間違いやすいのが「〜させていただく」の使いすぎです。例えば「明日休ませていただきます」という表現。これは「休むことを許可してもらう」という意味なので、上司への連絡としては適切ですが、「資料を読ませていただきました」のように使うと違和感があります。単に「資料を拝見しました」で十分です。「〜させていただく」は「相手の許可や恩恵を受ける」場合に使うもので、すべての行動に使うのは不自然です。敬語は丁寧すぎても不自然になるので、適度な使い方を心がけましょう。

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ビジネスシーンにおける敬称と敬語の実践的な使い方

ここでは、実際のビジネスシーンでの敬称と敬語の使い方について、具体的な例を交えて解説します。状況に応じた適切な表現を身につけましょう。

ビジネスシーンにおける敬称と敬語の実践的な使い方

社内と社外での敬称と敬語の使い分け

ビジネスシーンでは、社内と社外で敬称や敬語の使い方を適切に使い分ける必要があります。以下に、主な場面での使い分けのポイントを紹介します。

  • 社内の上司:「部長」「課長」などの役職名、または「〜さん」
  • 社内の同僚・後輩:「〜さん」(女性には「〜さん」、男性の後輩には場合によって「〜君」)
  • 取引先の担当者:「〜様」(メールや文書)、「〜さん」(口頭での会話、ただし初対面や改まった場では「〜様」)
  • 取引先の役職者:「〜部長様」「〜社長様」(メールや文書)、「〜部長」「〜社長」(口頭での会話)
  • お客様:常に「〜様」

社内では、上司に対しては「部長」「課長」などの役職名で呼ぶか、「〜さん」を使うのが一般的です。同僚や後輩に対しては「〜さん」を使います。男性の後輩に対しては「〜君」を使うこともありますが、最近では「〜さん」で統一する企業も増えています。

社外の人に対しては、基本的に「〜様」を使いますが、口頭での会話では「〜さん」を使うことも多いです。特に、取引先の役職者に対しては、メールや文書では「〜部長様」「〜社長様」と書きますが、口頭では「〜部長」「〜社長」と呼ぶのが一般的です。

メールと会話での敬語表現の違い

メールと口頭での会話では、敬語の使い方に若干の違いがあります。それぞれの特徴を理解し、適切に使い分けましょう。

場面 メールでの表現 会話での表現
挨拶 「お世話になっております」
「ご無沙汰しております」
「お世話になっております」
「お久しぶりです」
依頼 「〜していただけますでしょうか」
「〜いただければ幸いです」
「〜していただけますか」
「〜お願いできますか」
確認 「ご確認いただけますでしょうか」
「お知らせいただけますと幸いです」
「ご確認いただけますか」
「お知らせいただけますか」
お礼 「誠にありがとうございました」
「深く感謝申し上げます」
「ありがとうございました」
「感謝しております」
謝罪 「誠に申し訳ございません」
「深くお詫び申し上げます」
「申し訳ございません」
「お詫び申し上げます」

メールでは、より丁寧で格式高い表現を使うことが多いです。例えば、依頼の場合、メールでは「〜していただけますでしょうか」「〜いただければ幸いです」といった表現を使いますが、会話では「〜していただけますか」「〜お願いできますか」といったやや簡略化された表現を使うことが多いです。

また、メールでは「誠に」「深く」などの副詞を付けて丁寧さを強調することがありますが、会話ではそこまで堅苦しい表現は使わないことが多いです。ただし、重要な謝罪や感謝の場面では、会話でも丁寧な表現を使うことがあります。

敬称と敬語の間違いやすいポイントと対処法

敬称や敬語は間違いやすいポイントがいくつかあります。ここでは、よくある間違いとその対処法について解説します。

よくある敬称の間違いと正しい使い方

敬称の使い方でよくある間違いと、その正しい使い方を紹介します。

よくある間違い 正しい使い方 理由
「様」と「御中」の混同 ・個人宛て:「○○様」
・組織宛て:「○○御中」
「御中」は組織全体に対する敬称
役職名と敬称の重複 ・「○○部長」または「○○様」
・「○○部長様」は文書のみ
口頭では役職名か敬称のどちらかを使う
「先生」の過剰使用 医師、弁護士、教授など特定の職業の人のみに使用 一般的なビジネスパーソンには使わない
「氏」の直接呼びかけ 「氏」は報告書や第三者への言及のみで使用 直接呼びかける場合は「様」か「さん」を使う
敬称の省略 ビジネスでは敬称を省略しない 敬称の省略は失礼にあたる

「様」と「御中」の混同は特によくある間違いです。「様」は個人に対する敬称で、「御中」は組織や部署全体に対する敬称です。「山田様」「営業部御中」のように使い分けましょう。

役職名と敬称の重複も注意が必要です。口頭では「○○部長」または「○○さん」のどちらかを使い、「○○部長さん」とは言いません。ただし、メールや文書では「○○部長様」と書くことがあります。

「先生」は医師、弁護士、教授など特定の職業の人に対してのみ使用し、一般的なビジネスパーソンには使いません。「氏」は報告書や第三者への言及の際に使用し、直接呼びかける場合は使いません。

敬語の誤用と二重敬語の回避方法

敬語の使い方でよくある誤用と、特に注意が必要な二重敬語の回避方法について解説します。

  • 尊敬語と謙譲語の混同:「社長が申されました」(誤)→「社長がおっしゃいました」(正)
  • 二重敬語:「ご覧になられました」(誤)→「ご覧になりました」(正)
  • 「お」「ご」の過剰使用:「お電話をおかけします」(誤)→「お電話をかけます」(正)
  • 「させていただく」の過剰使用:「読ませていただきます」(誤)→「拝見します」(正)
  • 「〜になります」の誤用:「私が山田になります」(誤)→「私は山田です」(正)

尊敬語と謙譲語の混同は、敬語の基本的な誤りです。「申す」は謙譲語なので、相手の行為には使えません。「社長が申されました」ではなく「社長がおっしゃいました」が正しい表現です。

二重敬語は、一つの言葉に敬意を表す要素が重複している表現です。例えば、「ご覧になる」はすでに尊敬語なので、「ご覧になられる」とすると敬意が重複して不自然になります。同様に、「お召し上がりになる」「ご説明させていただく」なども二重敬語です。

「お」「ご」の過剰使用も注意が必要です。「お」「ご」は名詞に付ける接頭語で、すべての言葉に付けるわけではありません。「お電話をおかけします」ではなく「お電話をかけます」が正しい表現です。

「させていただく」の過剰使用も最近よく見られる誤りです。「させていただく」は「相手の許可や恩恵を受けて行う」という意味なので、すべての行動に使うのは不自然です。「資料を読ませていただきます」ではなく「資料を拝見します」が適切です。

ビジネスアドバイザー

敬語の間違いで最も多いのが「二重敬語」です。例えば「ご説明させていただく」という表現。「ご説明する」も「説明させていただく」も敬語なので、どちらか一方で十分です。「お客様がお見えになられました」も「お見えになる」だけで敬語として完成しています。敬語は「丁寧であればあるほど良い」というものではなく、正確に使うことが重要です。迷ったら、シンプルな表現を選ぶのが無難です。「ご説明します」「お客様がいらっしゃいました」のように、簡潔で正確な敬語を心がけましょう。

敬称と敬語の適切な使用は、ビジネスシーンでの信頼関係構築に欠かせない要素です。基本的なルールを理解し、日常的に意識して使うことで、自然と身につけることができます。

特に、「社外の人には『様』、社内の人には『さん』」という敬称の基本や、「相手の行為には尊敬語、自分の行為には謙譲語」という敬語の基本を押さえておくと、多くの場面で適切に対応できるようになります。

また、よくある間違いや二重敬語などの誤用に注意し、正確で自然な敬語表現を心がけましょう。敬称と敬語を適切に使いこなすことで、ビジネスパーソンとしての評価も高まります。日々の実践を通じて、自信を持って敬称と敬語を使えるようになりましょう。

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よくある質問

質問1:メールの宛名で「様」と「御中」はどう使い分ければよいですか?
回答 「様」は個人宛て、「御中」は組織や部署全体宛ての場合に使います。例えば「山田太郎様」「株式会社〇〇 営業部御中」のように使い分けましょう。
ビジネスアドバイザー

「様」と「御中」の使い分けで迷ったら、「特定の個人に届けてほしいのか、それとも部署の誰でも良いのか」を考えるとわかりやすいです。特定の担当者がいる場合は「山田様」、担当者が不在でも部署の誰かに対応してほしい場合は「営業部御中」とします。両方書く場合は「株式会社〇〇 営業部 山田様」とし、「営業部御中 山田様」とはしないのがマナーです。

質問2:取引先の部長に話しかける時、「部長」と「〇〇さん」どちらで呼ぶべきですか?
回答 基本的には「〇〇部長」と役職名で呼ぶのが適切です。親しい関係になっても、ビジネスの場では役職名で呼ぶのがマナーとされています。
質問3:「させていただく」という表現はどのような時に使うべきですか?
回答 「させていただく」は相手の許可や恩恵を受けて行動する場合に使う表現です。例えば「お休みさせていただきます」は適切ですが、単に「資料を読みました」という場合は「拝見しました」と言うべきで、「読ませていただきました」は過剰な敬語になります。
ビジネスアドバイザー

「させていただく」の使いすぎは現代の敬語の大きな問題点です。本来は「相手の許可を得て」という意味なので、「ご説明させていただきます」は「説明することをお許しください」というニュアンスになります。単に丁寧に説明するなら「ご説明します」で十分です。敬語は丁寧さと正確さのバランスが大切。過剰な敬語は逆に不自然さを生み出すことを覚えておきましょう。

質問4:「ご確認いただけますでしょうか」と「ご確認お願いします」はどちらが適切ですか?
回答 「ご確認いただけますでしょうか」の方が丁寧な表現です。「ご確認お願いします」も間違いではありませんが、目上の人や取引先には前者のような依頼形の方が柔らかく丁寧な印象を与えます。
質問5:社内メールで上司に「〇〇様」と書くべきですか、それとも「〇〇さん」でよいですか?
回答 社内メールでは基本的に「〇〇さん」で問題ありません。ただし、社内の文化や上司の好みによって異なる場合もあるので、周囲の慣習に合わせるとよいでしょう。