「キャリアの選択肢を増やすことを忘れずに」―― インターネット系人材キャリアのプロフェッショナルが、若手社会人へ送るメッセージ
助田氏は、Webディレクターとしてのキャリアを活かした経験者として人材業界で豊富な経験を積んできたキャリアのエキスパートです。3,000名以上のキャリア相談を行い、2022年には一般社団法人ディレクションサポート協会を設立。現在は複数のデジタル系企業の顧問も務めています。
キャリアアップの転機 ―― HR事業への挑戦
――まず、キャリアの中で大きな転機となった出来事について教えていただけますか?
「2012年に立ち上げた人材紹介事業が、自分にとって大きなキャリアアップの転換点でした。それまでHR関連の経験がほとんどない状態でしたが、むしろそれが業界慣習や型に縛られない独自の視点を持つことができた理由かもしれません」
死に物狂いで求職者との面談を重ね、企業の課題をヒアリングする中で専門性を築いていったと語る助田氏。同時に、Webディレクターのコミュニティを運営することで、現場で働くキャリアアップの生の声に触れる機会を得たといいます。
3,000人のキャリア相談から見えてきたもの
――多くのキャリア相談を通じて、どのような傾向に気づかれましたか?
「特にWebディレクターやデザイナーの方々に共通しているのが、視野の狭さがあります。人間関係が社内の関係性だけで完結してしまっていたり、情報源が書籍やネットに限られていたりすることが多いのか、でも実は本人達が思っている以上に選択肢があるんですけどね。」
具体例として、40代中盤のディレクターの転職支援の事例を挙げる助田氏。従来の選考をプレゼンテーションとして捉え、履歴書と職務経歴書だけでなく、ポートフォリオとしてのプレゼン資料を作成することで、書類選考の通過率が大幅に向上しキャリアアップに成功した例を紹介しました。
項目 | 従来の傾向 | 改善策 | 期待される効果 |
---|---|---|---|
人間関係 | 社内関係のみ | 社外ネットワークの構築 | 視野の拡大、新たな機会の創出 |
情報源 | 書籍やネットに限定 | 多様な情報源の活用 | 幅広い知識と洞察の獲得 |
転職活動 | 履歴書と職務経歴書のみ | ポートフォリオ型プレゼン資料の追加 | 書類選考通過率の向上 |
キャリアアップのための具体的アプローチ
――20代後半の社会人がキャリアアップを目指す際、具体的にどのような行動を取るべきでしょうか?
「まずは世の中のニーズを知ることから始めるべきです。ニーズが分かれば、そこから必要なソリューションや市場価値も見えてきます。30代以降、本格的にキャリアを築いていく上で、どの市場で勝負していきたいかを選択するためのネタ帳にもなります」
特に強調されたのが、人とのつながりの重要性です。「書籍やネットだけでは得られない情報があります。イベントやコミュニティ、SNSを積極的に活用して、実際に人と出会うことを推奨します」
コミュニティ構築のコツ
――コミュニティ運営も気になる経験ですが、運営するためにはどんな行動が必要でしょうか?
「コミュニティ運営したいのであれば、まず興味のあるテーマのコミュニティに所属してみることから始めるといいでしょう。可能であれば参加しながら運営側にちょっとでも携わることで、運営上の課題や参加者のニーズを直接理解することができます」
特に若手向けのアドバイスとして、時限制のコミュニティ運営を推奨。「始める時点で終わりを決めておくことで、ミッション達成までの活動がクリアになるし、人間関係も円滑のままコミュニティ独自の流動性を適切にコントロールできます」と語ります。
- コミュニティ運営のための基本ステップ
- 興味あるテーマのコミュニティに所属
- 参加者として経験を積む
- 運営側の役割に少しずつ携わる
- 若手向け時限制コミュニティ運営のポイント
- 開始時に終了時期を決定
- 明確なミッションと活動計画の設定
- コミュニティの流動性を適切に管理
失敗から学ぶ ―― 経験を次につなげる
――ご自身の経験の中で、特に印象に残っている失敗はありますか?
「ディレクター時代、納期が2ヶ月遅れ、月300時間労働となってしまったシステム開発系プロジェクトがありました。根本的な原因は、関係者との合意形成が不十分だったこと。この経験から、どんなプロジェクトでも徹底的な合意形成を心がけるようになりました」
失敗への向き合い方について、助田氏はこう語ります。「失敗を失敗として認め、そこから学ぶ姿勢が重要です。同じ失敗を繰り返さない工夫をしながら、次のチャンスを待つ。それでも上手くいかない場合は、違う道を選択する勇気も必要です。」
若手社会人へのメッセージ
――最後にビジネス賢者の20代ユーザーに向けてメッセージをお願いします。
「20代はキャリアの選択肢ネタを増やすのに最適な時期です。興味があることには、とにかくチャレンジしてみてください。途中で諦めても、失敗してもまったく問題ありません。むしろ、その経験が必ず役立つときが来ます。」
最後に、助田氏は「相談できる人」を20代のうちから作っておくことの重要性を強調します。「僕らが運営している企業向けの社外メンター制度も、その選択肢の一つです。一人で抱え込まず、困ったときに相談できる関係性を築いておくことが、長期的なキャリアアップの成功につながります。」
※本インタビューは2024年12月に実施されました。
プロフィール
助田 正樹(MASAKI SUKEDA)
一般社団法人 ディレクションサポート協会 代表理事
株式会社SRI 顧問
株式会社ShareDan 顧問
東京都品川区出身の1976年7月生まれ。桜美林大学経済学部を卒業後、メーカーでシックスシグマというフレームワークのR&Dセクションに所属。2005年からインターネット系ベンチャー企業中心にWebディレクターとして数社経験。その後フリーランスとしてWebディレクション業務中心に活動。地域コミュニティサイト、採用サイト、モバイル&デジタルサイネージなど様々なWebサイト、システムの構築・運用から、新規事業プロジェクト企画、立ち上げを経験。2012年6月に人材紹介&コワーキングスペース事業を立ち上げ、取締役で8年間従事。Webディレクター中心に累計3,000名近くのキャリア相談を行う。日本ディレクション協会創設メンバーの1人。2020年4月より個人事業SPEC.の活動を開始後、2022年10月に一般社団法人ディレクションサポート協会を設立。デジタル系企業数社の顧問を務める。